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「何がだ?」。そう聞かれて、晋也は高城に言い返す気力が失せてしまった。
嘆息を漏らし、「もういい」と晋也は言うと、高城の肩に置いた手を放し、その場からとぼとぼと離れて行った。高城は首を傾げ、たらおが押し黙る中、晋也は屋上の鉄扉の取っ手に手を掛ける。
「待ちなよ」
そこで、今まで押し黙っていたたらおが初めて声を挙げた。
「高城くんは、本当に知らないんだ。そこまで『真実』に興味があるなら、僕から教えてあげよう」
たらおは、そう言うと、チラリと謎野の方に目をやった。謎野は、そんなたらおを見て、コクリと頷いた。
「お前は元々大地側だったしな。その口振りだと何か知ってるみたいだな。
良いだろう。話してみろ」
晋也は、そんな二人のアイコンタクトに気付くことなく、たらおに向かって上から目線でそう言った。
「いいよ」
たらおは、晋也の言葉にもコクリと頷き、そして『あの日』の真実を語り始めた。
「大地は、川島の魔力を解放する為に、凶事を企てたんだ」
屋上のフェンスに手を掛けて、空を見上げながら、たらおは言葉を続けた。
「ー…以上!」
「以上って分かるかーッッ!!」
晋也は、たらおのボケにこの上なく激怒すると、たらおに向かい叫び散らした。たらおは、そんな晋也の反応を見て、クスりと笑った。
「要するに、大地の目的は世界の滅亡でも、絶望した人類を殲滅させることでもなかったワケだ。全ては、川島を魔力から救い出すための興行だったってことだよ」
謎野が攻略本を閉じて、晋也に向かいそう言ったと同時に、晋也は瞬間物凄い勢いでまばたきをし始めた。晋也がまばたきをするということは、本人がよっぽど頭にきているという証拠であり、そして激怒している証拠である。
高城も謎野もたらおも、晋也がその仕草をすると言うことは、酷く激怒しているというのは理解できたが、だからと言って宥める気はさらさらなかった。とりあえず、晋也の次の言葉を待っていたたらおに、晋也は独り言のように大地に対し愚痴をこぼし始めた。
「なんだよそれ。じゃあ何か?俺達は、その興行に踊らされただけってか?んなもん知るか!勝手に救ってろよ。何で俺等まで巻き込む必要があるってんだ。勘違いにも程があるだろうがよ」
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