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晋也の愚痴は際限なく発せられ、謎野はそんな晋也の愚痴に嘆息を漏らした。
確かに言いたいことは分かるが、つくづく『目の前のことにしか頭のない男』だ。謎野は、晋也の愚痴を聞きながら、心底そう思った。
「さぁね」
晋也の言動に呆れて言葉に詰まる謎野に代わり、たらおがまた口を開いた。一言喋り、晋也の愚痴を止めたかと思うと、更に言葉を続けた。
「そこまでは僕らにもわからない。だけど、一つだけ言えることは、あの人は遊び好きに見えて、無駄なことはしない人なんだ」
「…どういうことだよ?」
たらおの意味深な言葉に、晋也は今までこぼしていた愚痴を言うのをピタリと止めて、たらおの方に視線を寄せる。つぶらな瞳は相変わらずだが、素っ気ない言葉と無表情の裏に、とんでもない『裏』が隠されているようで、晋也はいつの間にかたらおの次の言葉を待っていた。
「川島『だけ』救いたかったなら、あれだけ派手に事は運ばなかったと思うんだ」
「成る程な。それで?」
「僕には、大地には川島を魔力から救い出すほかに、何か違う意図があったんじゃないかと思えてならないんだよ」
それを聞いたとき、晋也はハッとなった。
考えたくはなかったが、晋也も大地が世界を滅亡させる上で、そのやり方に疑問を感じたことは、戦闘中に多々あった。しかし、あの時は疑問が生じても、その謎を解き明かす時間がなかった。しかし、今はその時間が充分にある。たらおが何か知っているのであれば、大地が何故世界を滅亡させようとするのに、あんな回りくどいことをしたのか、知りたいところではあった。
ところが、たらおはそこまで喋ったところで、晋也に背を向けて屋上を出ようとドアのぶに手を掛けた。賺さず、晋也が声を掛け、たらおを引き止めた。
「おい!どこに行くんだよ!!」
話はまだ終わってないだろ、という言葉は何とか呑み込んで、とりあいずたらおを引き止めることに晋也は成功する。しかし、たらおは『晋也が知りたい続き』は話さずに、徐(おもむろ)にポケットから一枚の紙を取り出すと、晋也にそれを見せ付けた。
「何だよ、それ?」
怪訝な顔をする晋也に、たらおがクスりと笑った。
「求人票。今年は特に就職厳しいらしいから、早めに動いとこうと思ってさ!」
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