たくさんの「好き」よりも

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「…最近、会ってないんです。 私の仕事が落ち着くまで、 しばらくの間ってことで」 「あの日は海事の忘年会だったらしいよ。 気休めにならないかもしれないけど」 片桐さんの言葉に思わず顔を上げた。 「ごめんね。部外者の僕が首を突っ込んで不愉快だと思うけど」 「いえ、そんなことないです。 海事とはプライベートの繋がりがないので、何も分からなくて…。 教えて下さってありがとうございます」 仕事中の話題じゃないけど、心配してくれる片桐さんが有り難くて頭を下げた。 「あの子、前に僕といる時に話し掛けてきた子だよね?」 言外に“どういう関係?”と 問われているのが分かる。 「はい…。 戸川君と昔付き合ってたらしいです」 「やっぱり…。女って怖いよね。 全然見抜けなかったな」 「そんなの分かる訳ないですよ」 「いや。 彼女の敵意みたいなものにね。 彼女が戸川君狙ってるの、 海事では結構有名らしいよ」 「…そうなんですか」 身を持って知ってはいるけど、 改めて気が重い。
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