たくさんの「好き」よりも

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「いや、まさか、ね…」 苦笑いで首を振った。 邪推ばかりしてても仕方ない。 あの場に二人でいたのは事実だ。 「結局は本人に聞かないとダメですね。 でも、少し楽になりました。 ありがとうございます」 もう一度、ペコリと頭を下げる。 「でも聞けないもんでしょ? 僕も昔同じことあったから分かるよ」 「同じこと?」 「うん。 昔、彼女が赴任前、他の男の胸で泣いてるのを目撃してしまって。 でも聞くに聞けなかった」 「それが、 戸川君だったんですよね?」 「あれっ、知ってるの?」 なーんだ、と片桐さんは笑った。 「結局、聞けないまま彼女は上海に赴任して、僕もアメリカに赴任した。 それでお終いだよ」
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