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「町田主任、帰国療養することになったんで、凌介先輩に決まりましたよ!私、一番におめでとうが言いたくって!」
渡辺の声が虚ろに響いた。
「先輩、嬉しくないんですか?
しかも、主任昇格ですよ」
どうでもいい。
望んでない。主任も赴任も。
「……いつ?」
力なく声が擦れた。
「できるだけ早く、だそうです。遅くても一月末までに」
「あと一ヵ月…」
しばらく来るなと告げた時の、
紗衣の泣き顔が浮かんだ。
“しばらく会わない”は“もう会えない”になってしまった。
彼女を裏切った気分だった。
あんなに泣かせたのに…。
胸が痛くて、耐えられなかった。
「この話、まだオフレコなんです。知ってるの、中島部長と管理部の数人だけですよ!」
「…忘年会の場所は?」
渡辺には構わず立ち上がった。
もうここにいる理由もない。
「待って、先輩」
渡辺が俺の腕を掴んだ。
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