君へ帰る道

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そんな時、同期の相原が出張でロンドンに一泊することになった。 日本にいた時はその軽さが微妙な奴だったけど、今はいい気晴らしになりそうだった。 アホな情報を山ほど持ってる奴でもある。 「やっほー。久しぶり戸川っちー」 「その“っち”て付けるの、 いい加減にやめろよ」 相変わらずの調子に呆れながらも 懐かしくてホッとする。 「ね、今晩戸川っちんち、 泊まっていい?」 「どこまで頑張って“っち”つけてんだ」 「戸川っちのロンドンライフ情報を女子に教えてやらにゃー。市場価値が高いんだよ」 「……」 あの指輪は隠しておかないと。 相原がどんな筋立てで言いふらすか、分かったもんじゃない。 「ねーねー、 なんでこんな遠い場所に家借りたんだ?」 帰り道、乗り継ぎ駅の長い通路で 渡辺と同じ反応をする相原。 「これでも最短ルートなんだよ。 乗り継ぎパターンを比較して」 「つか、会社に近くてお洒落なサウスエリアがあるじゃん。ここ北部だよね?地下に潜ってても分かるよ」 「…いちいちうるっさいんだよ。 気に入ってんだからいいだろ」 理由を問われると決まり悪くて、 逆ギレでごまかした。
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