3739人が本棚に入れています
本棚に追加
/30ページ
「ねぇ、まだ着かないの?」
乗り継ぎ駅の長い通路に
耳障りなヒールの音を響かせて、
渡辺がついてくる。
「受付の人にリョースケの恋人?
って言われちゃった、ふふ」
「……」
会社の応接室で驚愕の対面の後、
俺はスタッフから集中砲火を浴びた。
貼りつく渡辺を引き剥がし、
すごい剣幕で帰れと怒鳴ったからだ。
渡辺は泣きだし。
騒ぎを聞いて駆け付けてきたスタッフには“はるばる会いに来た恋人を怒鳴りつけた人でなし”と勘違いのレッテルを貼られ。
結局、宿も取っていない渡辺を
しょいこむ羽目になった。
絶対、確信犯だ。
「……何が紳士の国だ、くそ」
俺を責め立てたスタッフを頭の中で罵る。
「先輩の部屋、楽しみー」
「……」
ムカつきすぎて、また怒鳴りそうで一言も返さないまま、自宅に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!