不器用な唇

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年末の雑踏の中、 人目も気にせず、 片桐さんは躊躇しなかった。 「僕は彼よりもずっと長く 君を傍で見てきたよ。 だから今度は真剣に言わせてもらう」 “いい人”だったはずの彼が、 これまで見せたことのない顔で 私を見据えた。 「僕が彼の代わりになる」 真剣な視線の色と熱に、 足元から捕われそうになる。 「そんなに捨て身になるのなら、 すべてを僕に預けて欲しい」
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