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「…せんせ、起きてくださいっ。
時間に遅れちゃいますよっ」
揺さぶられてゆっくりと目を開けると、ぼんやりと滲む見なれた天井が目に入った。
微睡みの気だるい中で腕を持ち上げて、照明の眩しさに手を翳す。
ギシ、と軋む音がして、自分がソファの上で寝ていることに気づいた。
「…せんせ?」
澄んだ声にハッとして視線を向けると、心配そうに俺を見つめる可愛い顔が見えた。
「…浅田」
愛おしさと懐かしさが胸に込み上げて、言葉に詰まる。
…ああ、やっと見つけた。
俺は腕を伸ばして彼女を引き寄せ、胸の中にぎゅっと抱き締めた。
小さな体の柔らかさと温もりに、泣き出してしまいそうになる。
ぐっと涙を堪えて浅田の髪に頬をすり寄せ、掠れた声で囁いた。
「…ただいま」
腕の中でモゾモゾと動いて顔を上げ、浅田は体を少し起こして不思議そうに俺の顔を覗き込んだ。
黒目がちな綺麗な瞳が俺を映してゆらゆら揺れている。
「…顔、よく見せて…」
言いながら手を伸ばして、彼女の頬にかかる髪を掬って耳にかける。
そして、ゆっくりと体を起こして座り直すと、両手で彼女の頬を挟んでじぃっと見つめた。
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