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購買に行くため、階段を駆け下りようとして、ふと足を止める。
姿勢を正すためにあるという踊り場の大きな鏡。
それを見つめる。
異国の血が入ったかのような女がこちらを見ていた。
鏡の向こうにいる彼女から視線を逸らさず、見据えていると、
「明路ー」
と上から声がする。
振り返ると、階段上に、隣のクラスの橘美緒が立っていた。
「あんた今朝さ。
あの幽霊階段のところで、髪の長い男の人と会った?」
「えーと。
会ったっけ?
……なんかそんな気もするけど」
もう、と美緒は、両の腰に手をやり、こちらを見下ろすと、
「相変わらずねえ」
と愚痴る。
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