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「何だ、霞でも照れるのか?」
高瀬が愉快そうに笑う。霞は少し不貞腐れた表情で高瀬を見つめた。
「そう云う意地悪が言えるんだね。高瀬も…」
他愛ないやり取り、何時だって人はこうして過ごしているのだと妙な感慨が高瀬に押し寄せる。
「そうだ、俺は案外嫌な男だよ。それで?午後は空けられそうなのか?」
「大丈夫よ。明日に回すわ」
「そう、俺も午前中に予定を片付ける」
気分転換がしたいのも、今の現状を肌で感じたいのも高瀬の本心だった。
二人揃って議事堂を出ると二台の車と黒づくめの男が二人。運転席にも一人づつ待機している。いつもの光景だった。
高瀬はわざと彼等を無視し、霞の手を取って歩き出した。
「歩いて行くの?」
霞が高瀬に問い掛ける。男達は何事か打合せをし、二人だけが歩いて後を追ってきた。
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