Ⅰ(恫子)

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  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄       「声」 隠せども 疲れ宿したその声音  強がり笑う貴方切ない   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ああ、俺。今、もう家かな?」 「修治、……うん、今帰ってきたところ。修治は?まだ仕事なの?」 「そっか、お疲れ。忙しいだろ?」 少し掠れた修治の声が流れてくる。 「私はまだそれほどでもないよ。修治はどうなの?」 「まあ例年並みにはね。来年、また新しい店がオープンするんだ。年末商戦これからって時に、そっちも任されるかも。オープン要員だな。」 恫子は返す言葉に詰まった。 「もしもし、恫子?」 「あっ……ああ、ごめん。体壊さないでね。寒くなってきたし……」 「ありがと。大丈夫!体力だけは唯一の自慢だからさ」 軽く笑う修治に、恫子は笑い返すことはできなかった。 いつもそうだ。 疲れていても夜毎にくれる電話は嬉しいけれど、そこに私はいるのかと思ってしまう。 修治が電話してくる中身は仕事のことばかり。 私が言いたい言葉はいつも逸らされる。 短い、声だけの逢瀬。   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄      「言」 会いたいの たった五文字の言葉さえ つむぐすべない渇れた唇   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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