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「声」
隠せども 疲れ宿したその声音 強がり笑う貴方切ない
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「ああ、俺。今、もう家かな?」
「修治、……うん、今帰ってきたところ。修治は?まだ仕事なの?」
「そっか、お疲れ。忙しいだろ?」
少し掠れた修治の声が流れてくる。
「私はまだそれほどでもないよ。修治はどうなの?」
「まあ例年並みにはね。来年、また新しい店がオープンするんだ。年末商戦これからって時に、そっちも任されるかも。オープン要員だな。」
恫子は返す言葉に詰まった。
「もしもし、恫子?」
「あっ……ああ、ごめん。体壊さないでね。寒くなってきたし……」
「ありがと。大丈夫!体力だけは唯一の自慢だからさ」
軽く笑う修治に、恫子は笑い返すことはできなかった。
いつもそうだ。
疲れていても夜毎にくれる電話は嬉しいけれど、そこに私はいるのかと思ってしまう。
修治が電話してくる中身は仕事のことばかり。
私が言いたい言葉はいつも逸らされる。
短い、声だけの逢瀬。
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「言」
会いたいの たった五文字の言葉さえ つむぐすべない渇れた唇
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