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「彷」
携帯を 切った指先無意識に 君のアドレス 探し彷徨う
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定期便のような電話を切ったあと修治は短いため息をついた。
恫子の声に潜む寂しさを、わかっていながらどうすることも出来ない。
大阪でチェーン展開しているスーパーに転職して三年め、ようやく認められる存在になりつつある。
店舗に配属されてがむしゃらに仕事をこなしてきた。
自分の仕事の範囲外とわかっていても足りない部分を積極的に補う姿勢。
有給どころか週一の休日さえ半日出勤は当たり前。
まともに休みをとったのはいつのことだか記憶にない。
その結果、修治は上にも認められる存在になれた。
役職もついてきた。
けれどもそれは、プライベートな時間のほとんどを差し出してようやく手に入れたものなのだ。
正直、疲れはピークにきていた。
恫子に会いたい、顔が見たい、それは修治の思いでもあった。
だが現実は厳しくて、ゆとりの無い日々が続いていくばかり。
クリスマスの浮き立つ気分には遠い二人の現実だった。
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「導」
風の音 開けた扉が指し示す 近くて遠い 君への導
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