第一章 胎動する異常と日常の狭間で

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2 結果を言うと巻き込まれた。 格好を指摘されたのではなく、遅刻の理由でだ。 サボりは罰則の対象らしく(ここら辺は安藤蜜の価値観で決まるから厄介だ)、結局は三人揃って反省文やら草むしりやらさせられた。 そのせいで授業をサボることになったし、そもそも『勝手に』活動している安藤蜜のほうが学園側にとっては問題児扱いされているのだが…………善かれと思って行動している彼女を止められる者はいなかった。 安藤蜜は結構頑固で人の話を聞いているのかも不明で先生も『まぁ学力はあるしいっか』なんて感じで、纏めれば『放置』状態が続いていたりする。 とはいっても、たまに絡まれる以外は繋がりを持たない夕霧たちがどうこうすることでもないが。 そんな彼らは昼休み中盤辺りで解放された。早速各々の昼食を持って屋上に移動する。 ほとんどの学校と同じく屋上に続く扉には鍵がかかっているが、夕霧が二人にバレないように時間操作することで開けることは可能。 青空の下。 大きく伸びをした夕霧はアンパン片手に薄く長く息を吐く。 「っあああ、疲っかれたーっ!! やべっ、メッチャ関節がボキボキ鳴ってやがる」 「災難だったな。まさか週一の徒競走まで狙われるとは」 「我、危険だと申告した」 「だっけか? でも楽しかったじゃん」 「反省、しろ」 「へいへい。今度はバレない遊びを考えるって」 『徒競走』には引きこもり担当である夕霧は参加していなかった。別にハブられていたわけじゃないが、その話題になると入りづらいのは仕方ない。 もぐもぐとアンパンをかじっていたら、そんな夕霧の心情に気付いたのか、東上光秀がニヤニヤとした笑みを浮かべ、 「あっらー? 俺たちだけの話題になっちゃって寂しいのかなー? ねーそこのところどうなの、ひ・い・ろ?」 「黙れクソ野郎。ブッ潰すぞ」 「喧嘩以外で口調が好戦的になるのって隠し事があるときだよなー? なに? マジで寂しかったの? 自分が知らない話題は嫌だったりするの? ねーねーどうなのー?」 完璧にからかいモードに入った東上光秀は鬱陶しい。夏場の蚊のほうがマシなレベルだ。
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