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七時四〇分。
三階建ての庭付き豪邸の玄関で靴を脱ぐ少年がいた。
この少年は噴水とかバラ園なんかがある庭がある豪邸などに住めるような金持ちではない。
彼は友達を迎えに来たのだ。
学生鞄にきちんとボタンをとめた学ラン。
半端に下ろしたズボンにかなり薄く染めた金髪(ほぼ黒だが)。
ゴロツキ……と本人は自称しているが、煙草や酒には手を出さないし、それらに手を出そうとしたクラスメイトを本気の殴り合いにまで発展させてでも止めたりする。
麻薬の使用未遂の時は酷かった。
知り合いを薬物中毒の道に引きずりこもうとしたヤクザモドキどもを全員病院送りにしてしまったのだ。
喧嘩っ早いくせに妙にルールを守る自称ゴロツキ。
学園では『綺麗な不良』なんて呼ばれている。
そんな彼の名前は夕霧緋色。
二年一組所属の学級委員長は片手をズボンのポケットに突っ込んだまま、合鍵で入った豪邸の中を我が家のような気楽さで進む。
ぐねぐねと広いが何もない寂しい通路を歩く途中に厨房でパンや缶ジュースを二個ずつ取り、目的の部屋の前まで辿り着いた彼の動きは手慣れていた。
つまり、片足を上げ、扉に叩きつけた。
ガンッ!! と鍵を力ずくで破壊する。
無理矢理開けた扉を通り、ある少女の自室へ入る。
至るところにもこもこしたぬいぐるみが散乱していた。
その中心。馬鹿デカい純白のベッド。
そこに目的の人物がパソコン片手に寝落ちしていた。
「ったく。まぁたネトゲか」
そこらにパン類を置き、少女のもとへ近づき、容赦なく踵落としをお見舞いしてやった。
「ふにゃっ!?」
「何が『ふにゃっ』だコラ。さっさと起きろや引きこもり」
「ぅ、にゅ……おんにゃのこの扱いが雑すぎだってぇ」
しばし身じろぎしていた少女は再度足を上げ始めた夕霧緋色を見て、慌てて飛び上がった。
金髪碧眼の少女は目をごしごしと擦りながら、
「ぼーりょくおとこー……DVー……」
「うるせえよ。朝飯食ってねえから腹減ってんだよ」
「じゃあ食べてくればよかったじゃーん」
「うるせえよ」
「理不尽だなー」
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