第二章 絶望の分岐点

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「ははっ。女神ちゃん放置プレイなんて初体験だよ~。……『上限』以上を外界に出力できない異能だからって全部まとめて他人に譲る異常者は違うな~」 女の子が言っているのは黒マントの青年との一件だろう。夢だから知っていても不思議じゃない。 あの時、夕霧緋色はレイチーネ『だけ』を時間操作で保護した。というより彼女『だけ』しか保護できなかった。 あの力にはある一定量しか具現できないという制限があるからだ。 上限は人一人を包み込める程度。 消費されれば補充できるから夕霧個人だけの喧嘩なら問題になることはなかったが……あの時はレイチーネを守らなければならなかったため、自分を守ることはできなかったのだ。 「ねぇねぇ聞いてるぅ?」 「うるせえなクソガキ。ちっとばっか黙ってろ」 相手が現実の女の子なら言わないような口調だった。相手が自分の夢だからできることだ。 「まぁいっや。本当はここで説明したかったんだけどさぁ、その調子じゃあ夢で処理されそうだよねぇ」 女の子は白いとんがり帽子を弄りながら、 「すぐに会えるだろうけど、とりあえずさいなら~ですわね♪」 「待てよ」 「あらら? ようやく異常性に気付いたかしら?」 夕霧はようやく身を起こし、適当な調子で吐き捨てる。 「だからキャラっつーか口調統一しろっての」 「…………ぷっ。にゃはは! いやあ、そうしたいのは山々なんだけどさ、わたしって生き物は一つのことに執着できなくてさあ。口調とかキャラとか性格とか、色んなもん全部が全部に路上の石ころ以上の価値を見出だせない的な☆」 「長げぇよ」 「辛辣だな夕霧緋色ぉ。そんなにレイチーネちゃんが心配かね、かねかね? じゃあ、仕方ないから、現実に戻してやるかっ」 瞬間。 世界が暗転した。
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