第二章 絶望の分岐点

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その女の子はハロウィンでもないのに、魔女の格好をしていた。 定番の黒ではなく、白ではあったが。 ニコニコと何が楽しいのか、満面の笑みを浮かべる女の子は窓の外にいた。 ここは三階だ。 つまり彼女は宙に浮かんでいるということ。 「……うるっせえなあ。今、てめえに構ってる余裕はねえんだよ」 そんな異常を見ても夕霧は驚いたりしない。その程度の異常では驚かないほど慣れた……というより、そんなことに意識を割く余裕がなかった。 だが、女の子はそんなことは気にせず病室へと入ってきた。窓を開けもせず、すり抜ける形で。 「もう遅いってやつかな。すでに『病魔』はレイチーネという生物の一部になっちゃってるしぃ。あとは体内の『病魔』が完全に全身を蝕んで溶けるのを待つって感じかなっ」 「デタラメ言ってんじゃねえぞ、クソガキ!」 「はにゃ?」 「俺には時間操作があるんだ。『病魔』なんて湿気たもんは今すぐにでも消滅させて」 「それが出来なかったから喚いてたんだろ、ボケが」 「…………ッッッ!!!!」 女の子は嘲笑を交えながら言う。 「所詮人間の『力』じゃ底が知れてるってやつ? つまりレイチーネちゃんはあ、残り一ヶ月前後の一生をお、死に怯えながら過ごさなきゃならない的な?」 「ぅ、……!!」 「ホント可愛そうだよねえ。悲惨だよねえ。悲劇だよねえ」 笑い、笑い、笑い。 凄惨に惨たらしい笑みで。 魔女の格好をした女の子は告げる。 「そんな絶望を粉砕するような、千載一遇のチャンスがあるって言ったら、どうする?」 ……………………………………………………。 しばし、夕霧緋色の思考は停止していた。やがて、じわりじわりと女の子の言葉が脳に浸透していく。 (チャンス? レイチーネを助けられる、のか? でも、え、嘘だろ……?) 女の子が普通じゃないことは気づいている。ならば、彼女にはレイチーネを救う『力』があるかもしれない?
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