第二章 絶望の分岐点

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「すぐには信じられないかな? じゃあ最悪を想定して証拠を見せよっか。確か、夕霧緋色のお爺ちゃんってもう死んでたよねっ」 「だったらなんだよ?」 「ちょうどいいじゃん」 女の子は軽やかに手を叩く。 それで十分だった。 一瞬、夕霧が使う時間操作のような淡い光とは大きく異なる、神々しい黄金の光が炸裂し。 それが晴れた、その時には。 目の前に死んだはずのお爺ちゃんが立っていた。 「なっ!?」 驚愕で固まっている間にも状況は動く。お爺ちゃんが一言、二言告げてから。 「証拠はこれで十分だよね。じゃ次いこっか」 ズボッ!! とお爺ちゃんを背後から叩き斬った女の子は言った。 いつの間に、どこから取り出したのか、生物のように脈動する刀を携えて。 嗅ぎ慣れてきた匂いが充満する。 それが、今起きていることは現実だと訴えかけてくる。 「なに、やって━━━」 「怒るのは勝手だけど、唯一の手段を手放すよ?」 「っ!?」 ギヂギヂと歯を噛み締めながらも黙る夕霧を満足そうに眺め、女の子は言う。 「このようにわたしは何でもできます。死者の蘇生、異世界への転移、過去の改変……まぁ願い事を叶えるだけ叶えられる『力』とでも認識してればいいよ」 それで、と彼女は繋げる。 「この素敵な『力』で夕霧緋色ちゃんの願いを叶えてあげようと思います」 「…………、」 「食いつかないの?」 愛らしく首を傾げる女の子。 夕霧は舌打ちと共に告げる。 「タダで叶えるってわけじゃねえだろ。もし無償の善意だってなら、あんな趣味の悪りぃ証拠は必要ねえし」 「うんうん。よくわかってんじゃん」 にこやかに朗らかに。 女の子は流れるようにこう言った。 「願い事を叶えられるのは一人だけ。わたし主催の『女神遊戯』で優勝した一人だけ。さあ、キミは参加する? しない?」 「するに決まってるだろ」 夕霧緋色は頓着しない。 やることは決まっている。 なら、『女神遊戯』がどんなものか聞くまでもなく即答できる。 レイチーネは必ず助ける。 そのためなら趣味の悪い遊びにだって付き合ってやる。
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