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「お~お~。迷わないかぁ。いいの? これ、相当悪質だよ?」
「だからどうした。俺の『力』じゃレイチーネは助けられねえ。他の異能者が助けてくれるなんて都合のいいことはねえ。常識の枠外の『力』が生み出す病気を常識程度の医療じゃ治せねえ。なら、『女神遊戯』とやらに賭けるしかねえだろ」
「運命をねじ曲げる男は思いきりがいいねっ。気に入ったぞ!」
「……何の話だ?」
「レイチーネの話だよ」
軽い調子で続ける。
「わたしの『未来予知』じゃレイチーネは死んでいた。まぁそれでも何も変わらないんだけどさ、夕霧緋色は半端に助けてみせた。……一つ聞きたいんだけど、予知じゃ最後まで錯乱してレイチーネを見殺しにしてたんだけど、どうやって正気に戻れたわけ?」
「大したことじゃねえよ」
夕霧はあの時のことを思い出したのか、微かに表情を歪め、
「助けたかっただけだ」
あの時、夕霧緋色は極度の錯乱状態にあった。それこそ殺人に何の躊躇も生まれないほどに。
理性や倫理や常識。
色んなものが抜け落ち、かなぐり捨て、そして。
最後に残ったのが、レイチーネを助けたいという想いだった。
それだけのことだ。
別に特別なことをやったわけではない、と夕霧は考えている。
…………どうせ救えなかったしな、とも。
「まー予知って不確かなものだしねー。普通の人間ならともかく、異能者ならねじ曲げることも可能っちゃ可能かー」
どうでもいいけど、と女の子は言う。
「それはそうとルール説明しようか。期間は一ヶ月。というか三〇日。つまり今日七月一二日から八月一二日まで! だから、えぇと、七二〇時間だから、四三二〇〇分で、二五九二〇〇〇秒!!」
そう彼女が叫ぶと同時、虚空からスポーツの試合などで使われてそうな巨大なタイマーが出現した。
表示は二五九二〇〇〇秒。
『女神遊戯』とやらの制限時間。
「参加者は五名。夕霧緋色は『三』だから。あ、これ渡しておくね」
また虚空から何かが出現した。
デジタルの腕時計のようだが、表示されているのは一から五の番号と、その横にそれぞれ『〇組』。
これがゲームの勝敗を決めるのか?
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