第二章 絶望の分岐点

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だからといって参加しなければすべては終わる。奇跡なんて都合のいいことは起こらず、レイチーネは死んでしまう。 二択。 双方ともに、選べば夕霧緋色の中で何かが壊れることはわかりきっている。 黒マントみたいな明確な悪党以外の参加者を殺すか。 助ける手段があるのに、『友達』を見殺しにするか。 (……上等、だ……) 夕霧緋色は笑う。 追い詰められた者特有の、泣き笑いのような表情で、吐き捨てる。 「参加、するよ。するっつっただろうが!! 聞いてなかったのかクソが!! 救ってやる。今度こそ! そのためならなんだってしてやるよ!!」 黒マントの青年は、夕霧緋色を見て自分と似ていると評した。 これがそうなのだろう。 一度暴力で悲劇を解決しようとした者は二度目も同じ手段を選ぶ。 強大な『力』があれば、その傾向は大きく、それでいて危険だ。 それに気づくことなく夕霧緋色は突き進む。 どちらを選んだとしても絶望しか広がっていないことに気づかず。 「これで満足か!あァ!?」 「落ち着こうよ。ほら、他の参加者と違って不利な夕霧緋色には最初に選ばせてあげるからさ」 告げ、頭の中に『情報』が流れ込んできた。 ・一組のカップルを阻む『理由』を指定の方法で女神が解決する羊皮紙。 ・飲んだ者の姿を一〇分消す透明薬液。 ・間にあるものを透視し、指定の場所を視認する遠望眼鏡。 ・一分間、人間を操る傀儡スマホ。 ・三分間、あらゆる異能を防ぐマント。 『女神遊戯』参加者が獲得できる便利アイテムです。これらは一度使えば使用不可になります。 詳しい使い方は参加者が手にすれば自動でインストールされます。 「人の頭を好き勝手弄りやがって」 「で、どれにする?」 「羊皮紙だ」 「…………? それ、一組しか稼げないよ?」 「言い換えれば一組だけは確実に獲得できる。くっついたカップルの『数』で勝敗が決するなら、『確実に』点数稼ぐべきだろ」 「…………目を逸らしちゃってまぁ」 「あ?」 「お~怖いよ~」 彼は気付いているのだろうか。 あくまで組数だけで思考を構築していることは『逃避』でしかないことに。
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