第三章 手っ取り早い点数稼ぎ

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1 七月一三日。 夕霧緋色は朝っぱらから二年二組の教室にいた。 というより姫川唯に詰め寄っていた。 ある程度整った外見の少女は困惑した様子でこちらを見つめていた。 「あの……?」 「姫川。ちょっといいか」 夕霧はあくまで流れるように告げる。 「好きだ。付き合ってくれ」 しーんと静寂が教室を支配した。 姫川が呆然とこちらを見ていた。 (断るだろうな。『後は何とかして「理由」を作り、惚れさせ、くっつく』。そうすりゃ手っ取り早く点数が稼げ━━━) 少々無茶な理論だった。 それでも夕霧はこれでいけると思っていた。 が。 「はい……。よろしくお願いします」 蚊の鳴くような声だった。 なぜか受け入れられた。 「う、ん? え?」 「だから……よろしく、お願いします……です」 「は、はあ!? えっ、ちょ……!?」 何かを言う前に状況が動いた。 「お、おおお! 公開告白成功かよっ」 「凄げー! 流石夕霧だな!!」 「今夜は赤飯ってか!!」 教室内は騒然となった。 なんていうか、今さら『点数稼ぎのためのハッタリなんです』なんて言える雰囲気じゃなかった。 (あれ? なんでこうなった?) 整った少女が腕に抱きついてきた。 ほんのりと頬を染めていたりしていた。 …………なんで?
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