第三章 手っ取り早い点数稼ぎ

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2 二年一組に帰ってきた夕霧は東上たちに詰め寄られていた。 というか、東上に胸ぐらを掴まれ、屋上まで引きずられた。 「おま、ちょっ、痛てえな! 真鯛も見てねえで助け……!」 「おい緋色。どういうことだ?」 「なにがだよ。つーかいい加減離せっつーの」 「姫川にコクったらしいな」 「…………、それが?」 「単刀直入に聞く。本当に好きなのか?」 「…………いやあ、そのだな、予想外っていうかなんていうか…………」 最後まで言い切る前にぶん殴られた。 後ろにのけ反る夕霧を東上は引き戻し、頭突き気味にぶつかり、睨み付ける。 「おいおい、顔はやめろって」 「戯れ言は終わりか? じゃぶっ潰してやるよ!」 「上等だッ。こちとら色々あって頭ん中ゴチャゴチャしてんだよ! 憂さ晴らしにゃ丁度いいってか!!」 すぐにでも激突する、その前に。 見かねた久木真鯛が間に入る。 「落ち着け」 「あ? 先に手ェ出したのは光秀だろうが!!」 「吼えてるんじゃないぞ! 心配しなくてもその腐りきった性根ごと叩き潰してやるからよ!!」 「あァ!?」 「やんのかコラ!!」 「だから、落ち着けって言っている!!」 久木が激しい叱責を放つ。 散々言い合っていた夕霧たちの動きが驚いたように止まった。 久木とは長い付き合いだが、ここまで大きな声を聞いたのは初めてだった。 「まず光秀。殴り合うのは緋色の言い分を聞いてからでもいい」 「だが、コイツは……!」 「光秀」 名前を呼んだ久木は東上とひたと睨み合う。 やがて舌打ちと共に東上は目を離した。 とりあえずは久木に任せるということだろう。そう判断した彼は夕霧の胸ぐらを掴んでいる東上の手を離す。 夕霧は口の端から流れている血を手の甲で拭っているところだった。 「口、大丈夫?」 「ハッ。光秀程度のチンケな拳が効くかっつーの」 「テメェ…………ッ!!」 前に出た東上を片手で抑え、久木は言う。 「らしくない」 「なにが?」 「全部が」 静かな、波のない声音で、久木は続ける。
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