早速の挫折

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 最初に入ったお客様は、一郎さんと言う本当にいい人だった。 優しくて紳士的で…  一郎さんは三年ほど前からアゲハさんの常連で、毎週アゲハさん指名で来ていた。  今回私に入ったのは、新人割引きで半額だったからと、たまには違う人に入ってみるのもいいかと思ったからだそうだ。  とても気さくな方で、世間話をしながら大人しく施術を受けてくれた。 「君、下の名前は何ていうの?」  背中をオイルで流している時に、一郎さんが私のファーストネームを尋ねてきた。 「ソフィアです!」  私が元気よく答えると、一郎さんは穏やかな口調でこう言ってくれた。 「そうかあ、ソフィアちゃんて言うのかっ! ……このお店はね、女の子が一年も経たずにすぐいなくなっちゃうんだ。 そんな中で続いてる子には共通点があってね、手の抜き方を知ってる子なんだよ! その方が慣れてる感じがしてお客さんも安心するんだ! だからもっとぞんざいに扱ってくれていいんだよ?」  その瞬間、私はこの人はぞんざいになんて扱えないと思った。 なんていい人なんだろうと……
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