*◇*距離*◇* #2

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 車の主は先生で。 「バイト帰りかぁ?」  と聞いてくる。 「はい」  今は、先生に会いたくなかった。昨日の今日だし……。 「クシュン」 「そうかぁまだ父さんは、出張中か?」  なんだか、ぼーっとするよ……。 「はい」 「クシュンクシュン」  くしゃみが、止まらない。 「風邪か?」  と聞かれ。 「そうみたいです」  と私が答えると、 「車に乗れ、送ってくから」  と先生の優しい一言。  それに私は甘えた、もうきつくて歩きたくなかった、家まで車だと楽で……。  静かな車内……いつもの香水の香りが私を包む。  あっくすり……。  その時、家に薬がない事を思い出し。 「先生お願いがあるんですけど……ドラッグストア行ってくれませんか?」  ぼーっする視界の中、先生に言うと。 「木下、大丈夫か?」  と顔を覗いてくる。 「大丈夫です」  と答えたけど、咳まで出て来て、完璧に風邪だと思った。  するといきなり、冷たい手が私の額をさわった。  ひんやりして気持ちがいい。 「大丈夫じゃないじゃないかぁ、これはかなり熱あるぞ」  先生の声が、ぼんやりとした意識の中で聞こえる。自分でも熱いとは、なんとなく気付いていた……。 「ですね……」  私は自覚をしたからか、なんだか全身の力が抜けた気がした。ちょっと目を閉じて黙る。そして、停まった車。 「ちょっと、待っとけよ」  と言って先生は車を降りた。
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