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繋いだ手につい目がいってしまう。すると、それに気付いたのか先生はゆっくりと手を離した。
私の手は、自由になったが、なにもすることがなくそのまま砂のうえに。
「木下」
ふいに呼ばれ、先生をみると、目があった。
「なんか、いつもと違うなぁ緊張してるのか?」
分かってるくせに、聞いてくるなんて意地悪だよね。自分だけがこんなに緊張してるなんて、なんだか恥ずかしくて。
「違います」
と答えた。すると、
「かわいいやつ」
と、私の頭をなでた。もう恥ずかしくて、体育座りしていた私は膝に額をつけ顔をかくした。
クスクス笑う先生。
もうぅ。
波の音が聞こえる。先生は黙って、今何を見ているのか、何を考えてるのか。私は少し落ち着いてから、顔をあげた。すると、先生は。
「木下、昨日はあってやれなくてごめんなぁ」
と謝ってきた。昨日の事なんて、今のこの幸せな時間ですっかり忘れていた私は、黙ってうなずく。
「付き合ってから、まともに会ってなかったよなぁ」
「私、全然平気だよ。メールとかしてるし、会えなくても電話できるし」
と強がってみせる。本当は、寂しかったくせに、先生を困らせたくないから。
素直になればいいのに、強がってしまうのは性格。
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