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先生は、私の手の上にそっと手を重ねる。いきなりの事にまたドキッとした。
しばらく2人は黙って海をながめた。波の音がやけに大きく聞こえて、静けさを強調しているようだ。
「さむいか?」
優しい声。
「少し」
そう答えると、
「車に戻るかぁ」
といってきたので、戻ることにした。先生は何気なく、私の手をとって前を歩く。
車に戻ると、香水の香りが私をつつんだ。
先生は外でタバコを吸っていたので、私は車の中でまった。前にあげた貝殻はまだ車の中に飾ってある。イルカの置物が、可愛いくてつい触っていた。
しばらくしてタバコを吸い終わった先生は戻ってきた、運転席に座ると少し座席を倒し。
「木下、時間大丈夫かぁ?」
と聞いてくる。時計をみると1時を過ぎていた。だけどまだ大丈夫。
「まだ、大丈夫です」
ギリギリまで1秒でも長く一緒にいたいから。
「もう、敬語じゃなくていいぞ」
「えっ? でも、敬語になってしまうんです」
いきなりそんな事を言われても、無理だ。
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