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10分なんてあっというまに過ぎていく……。
先生に耳元で囁かれた言葉は、私の涙腺を緩めて涙は止まらなかった。
「もう泣きやめ」
とギュッと強く抱き締めてくれた先生に、
「だっ……てぇ」
と私は、なき続けていた。
すると、先生は私をはなして、
「ほら、涙を拭いて。もう部屋に戻って、俺にはまだやる事があるから、なっ」
そう言うと、私から視線をそらし、後ろを振り返った。
先生で見えなかったけど、そこには母さんが立っていた。
先生は、母さんが戻ってきていた事に気付いていたみたいで……。
立ち上がると、
「すみません、もう一度、今度は亜紀さん抜きで話させてもらえませんか」
と母さんに言っていた。
(先生……)
母さんはそんな先生を見て、少し微笑むと“ちょっと待ってなさい”といい、また部屋に戻った。
先生は、また父さんと話す気なんだ。
母さんが部屋に戻ったのを確認すると、先生は
「亜紀は部屋に戻って。あとで電話するから」
そう言い、私を立たせ頭を軽く撫でた。そして、
「髪型……とても可愛い、似合ってる」
と笑った。
そっか……髪を切った私を見るのは、初めてなんだよね。
「じゃあ、またな」
そう言うと先生は、私の背中を押した。
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