15人が本棚に入れています
本棚に追加
「相沢先生!」
そう呼んでも、止まってくれない相沢先生は、右に曲ったり左に曲ったり、そして行く先が突き当たりだとわかると、足を止めた。
どれくらい引張られてきたのか、もう辺りに人の姿はない。
そこには、私と相沢先生……そして、私達を追いかけてきた紗香さんの姿。
私はちょっと肩を揺らしながら、早くなる心臓をおさえようと深呼吸した。
「……」
「……」
誰も何も話さない、紗香さんに背を向けている相沢先生に、相沢先生の背中を見つめる紗香さん。
「良樹……」
と呼ぶ紗香さんの瞳には、相沢先生しかうつっていないみたいで、私は相沢先生の側から離れた。
紗香さんの方を向こうとしない、そんな相沢先生の口から出た言葉は。
「もう、俺達はとっくに終わってるだろ?
お前も早く恋をしてくれよ」
という言葉だった。
その時の相沢先生の顔は、私が見てきた中で一番の悲しい顔をしていた。
「そんな事いわないで……」
と今にも泣き出してしまいそうな紗香さん。
私はただ黙ってみていた。
最初のコメントを投稿しよう!