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「う……ん」
と泣きながら頷く私の頭を、先生は優しく撫でた。
懐かしい温もりが……私の涙腺をさらにゆるくする。
「ごめんな……」
先生が謝る事じゃないのに……。
その時、化学室の方で扉を開けようとする、物音がして。先生の手はぴたりと止まる。
「あれ? 開かない」
という声が聞こえて。
「準備室かな?」
と、また別の人の声が聞こえて、廊下をこっちに向かって歩いている音が聞こえた。
すると、先生は静かに私を立たせ、真っ暗な化学室に引っ張って連れていってくれた。
真っ暗な中……私と先生は化学室の大きな机の影に隠れるように床に座った。
涙が止まらない私……見つかるかもしれないという、なんとも言えない恐怖……。
準備室の開く音が聞こえて、
「あれ? 細川先生いないよ」
「化学室じゃない」
なんて聞こえて、見つかりそうで……ビクビクしていた。
パチンとつく電気に、もうダメだって思ったけど。
「どこいったんだろ?」
とまた電気が消えて、その人たちは、居なくなった。
足音が遠のいていく……。
「ふぅ……」
と、息をついた先生は。
「大丈夫か?」
と、私の頭を撫でたあと。
立ち上がると、私をひょいっと抱き上げ机の上に座らせた。
「せんせぇ……」
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