*◆*抱擁*◆*

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「う……ん」 と泣きながら頷く私の頭を、先生は優しく撫でた。 懐かしい温もりが……私の涙腺をさらにゆるくする。 「ごめんな……」 先生が謝る事じゃないのに……。 その時、化学室の方で扉を開けようとする、物音がして。先生の手はぴたりと止まる。 「あれ? 開かない」 という声が聞こえて。 「準備室かな?」 と、また別の人の声が聞こえて、廊下をこっちに向かって歩いている音が聞こえた。 すると、先生は静かに私を立たせ、真っ暗な化学室に引っ張って連れていってくれた。 真っ暗な中……私と先生は化学室の大きな机の影に隠れるように床に座った。 涙が止まらない私……見つかるかもしれないという、なんとも言えない恐怖……。 準備室の開く音が聞こえて、 「あれ? 細川先生いないよ」 「化学室じゃない」 なんて聞こえて、見つかりそうで……ビクビクしていた。 パチンとつく電気に、もうダメだって思ったけど。 「どこいったんだろ?」 とまた電気が消えて、その人たちは、居なくなった。 足音が遠のいていく……。 「ふぅ……」 と、息をついた先生は。 「大丈夫か?」 と、私の頭を撫でたあと。 立ち上がると、私をひょいっと抱き上げ机の上に座らせた。 「せんせぇ……」
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