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先生はそれ以上、あずさについては聞いて来なかった。
「早くご飯食べるぞ」
そして私達は、残りの弁当を食べた。
「なぁ亜紀」
弁当をハンカチで包んでいる最中に、声をかけられ、私は手を止めずに先生の事を見ると。
「卒業式に迎えにこれそうにない……」
と言った。
「なんで!?」
なんだか体温が下がっていく感じがした。
卒業したら迎えに来てくれるって、約束したのに……『迎えにこれそうにない』その理由が『忘れてくれ』そう意味していると、今までの経験から思った。
「亜紀?」
目には一気に涙が溢れていく。そんな私に先生は。
「なっ泣くなよ」
と焦っていた。
「なんで? 先生は私にキスしておいて、好きだと言っておいて、捨てるの?」
思わずこぼれてしまった言葉に、先生は口を開けてポカンとしている。
あずさを失った今……もう何も失いたくない。
すると、
「ちがう! ごめん俺の言い方が悪かった。卒業式の日に迎えに来たかったけど、その日はこっちに帰ってこれそうもないんだ」
「えっ!?」
「次の日が卒業式があって、沖縄から出られないんだ」
頭の中で整理して、自分が早とちりした事に気付いた。
「せんせぇ~のばかぁ~。捨てられると思ったぁ~」
安心感からなのか、一気に体の力が全部抜けた様な気がして、涙が止まらなかった。
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