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「亜紀は着替えてこい」
その言葉に私は席を立った。先生の事が気になり、チラッと見ると、『いっておいで』と言っているかのように微笑み頷いた。
部屋に行き、私はすぐに制服から家着に着替えて、そして、また父さんたちの所に戻った。
時間的に5分から10分だったと思う。その間に何があったのか。
「早く座りなさい」
と座ったのはいいけど、テーブルには私の食事と一緒に先生の分まで準備されていて。
(何が起こったの?)
「ちょっと、父さんは部屋に行ってくるから、食べてなさい」
そういい、父さんはいなくなった。母さんはキッチンで洗い物をしている。
先生をふと見ると、
「食べようか」
と言うから、頷いた。
「いただきます」
「いただきます」
(なんでこんな事になってるの?)
そう思いながらも、なんだか聞けないまま黙々と食事をする。トンカツに味噌汁にサラダ、ごはんが胃の中を満たす。
静かな部屋……母さんが食器を濯いでいるだろう音と、たまに私達のお箸がお椀にあたる音だけが聞こえていた。
すると先生はいきなり、小声で、
『頼むトマト食べてくれないか? 苦手なんだ』
と、お願いしてきた。
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