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「だって……」
弁当をつつく箸も止まってしまう。そんな私を先生は見ている事が出来なかったのか、最初からそれが聞きたかったのか、話しを変えてきた。
「安藤とは……どうだ?」
と。あずさの事を聞かれるとは思っていなかった、せっかく考えないで置こうと蓋をしていたのに、先生の手によってあけられてしまった。
「なるべく考えないようにしてます……」
今日は、あずさの事をなるべく視界に入れないようにしていた。
視界に入る度に考えてしまうからだ……。
まだ戻れるかもしれないとか、話しかけても良いんじゃないかって。
でも、そんな事もう無理だって分かっているから、期待をしないように、避ける事しか出来なかった。
「亜紀?」
先生の声に、顔をあげた。いつの間にか俯いていたんだ……。
「もう、無理なの知ってるのに……期待しちゃうんですよね。 まだ、戻れるんじゃないかって」
「そっか」
先生の大きな手が私の頭を優しく撫でた。
それで私は、少しずつ平常心を取り戻すんだ。世界で一番大好きな人、大切な人の手によって。
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