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「お待たせぇ~」
「遅いよ」
今日は、琢磨と約束をした日。琢磨は10分遅れてやってきた。
「ごめん、ごめん。途中で近所のおばさんに捕まっちゃってさ」
12月に入っていた。
街頭にはクリスマスに向けて飾りつけられた、ツリーやリースなどがいっぱいあった。
「なんだか、もうクリスマス一色だよね……」
そんな事を話しながら、私達は目的の場所へと歩いていた。
先生がどんな所で育ったのか、知れる事がなんだか嬉しくて、ドキドキワクワクしていたんだ。
施設に行くことは、先生には内緒にしてある。琢磨の事を話さなきゃいけなくなっちゃうから。
琢磨は、先生に自分が『たっくん』だって事を言わないで欲しいみたいで……『秘密な!!』と、何度も言われた。
「もうすぐで着くから」
賑やかな町は、施設に向かうにつれて、少しずつ落ち着いた、静かな場所になってきた。
「なんだか、楽しみ」
隣り町という案外近場で、先生は育ったんだ。
もしかしたら何処かですれ違っていたかもしれない、なんて、一人考えていた。
それから、細い路地に入り、段々と人通りが少なくなってきた。
「あの道曲がったら、もう目の前だから」
左りに入る道を指差した琢磨に、私は頷いた。
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