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「どうした?」
「ん? なんでもない」
この場所を知っている。その時、考えた事は、もしかしたら私は、養子なんじゃないかって事だった。
(まさかね……)
そんなはずがない。でもいつ頃、自分が何歳くらいの頃に来たのか、何故この場所を知っているのか、思いだそうとしても、思い出せなかった。
「いらっしゃい。たっくんったら、可愛い彼女まで連れてきたのぉ」
と職員らしき人は、40代くらいだろう、私を見るなり笑顔でそう聞いてきた。
「ちがっ、こいつは木下亜紀。シン兄ちゃんの彼女みたいなもん」
そんな紹介を琢磨がするもんだから、なんだか恥ずかしくて、黙ってお辞儀をした。
その時、名前を聞いて普通の反応だった事に、安心している自分がいた。
(やっぱり、ここをただ知ってるだけだよね)
「シンのぉ~!?」
と私を舐め回すように見た後、
「あっ失礼。私はここの職員の田村といいます。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「というか……高校生よね?」
田村さんの質問に頷くと。
「高校生に手を出したのぉ~」
田村さんは、先生の事を犯罪者だと言いながら、建物の中へと案内した。
でも、先生の事を罵りながらも田村さんはなんだか嬉しそうだった。
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