*◆*過去*◆*

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「どうした?」 「ん? なんでもない」 この場所を知っている。その時、考えた事は、もしかしたら私は、養子なんじゃないかって事だった。 (まさかね……) そんなはずがない。でもいつ頃、自分が何歳くらいの頃に来たのか、何故この場所を知っているのか、思いだそうとしても、思い出せなかった。 「いらっしゃい。たっくんったら、可愛い彼女まで連れてきたのぉ」 と職員らしき人は、40代くらいだろう、私を見るなり笑顔でそう聞いてきた。 「ちがっ、こいつは木下亜紀。シン兄ちゃんの彼女みたいなもん」 そんな紹介を琢磨がするもんだから、なんだか恥ずかしくて、黙ってお辞儀をした。 その時、名前を聞いて普通の反応だった事に、安心している自分がいた。 (やっぱり、ここをただ知ってるだけだよね) 「シンのぉ~!?」 と私を舐め回すように見た後、 「あっ失礼。私はここの職員の田村といいます。よろしくね」 「よろしくお願いします」 「というか……高校生よね?」 田村さんの質問に頷くと。 「高校生に手を出したのぉ~」 田村さんは、先生の事を犯罪者だと言いながら、建物の中へと案内した。 でも、先生の事を罵りながらも田村さんはなんだか嬉しそうだった。
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