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「いえ、なんでもないです」
心とは裏腹に、笑顔でそう答えた。
(違うよね……養子じゃないよね? 私は、父さんと母さんの子供だよね)
田村さんや施設の人たちの態度を見る限り、私がここで育ったという事は、90パーセント有り得ない事だと、おもった。
でも、みんなが演技をしていたら……。
その不安が残りの10パーセントだろう。
何故私はここを知っているのか、どうにかして、解決したいと思ったけど、どうしたらいいのか分からなくて、いくつかの部屋を案内されている間、ずっと考えていた。
そして、一番この方法が良いだろうと考えだしたのが、田村さんに聞いてみる事だった。
琢磨の部屋だったという、2段ベッドが2つ置いてある部屋を案内された、琢磨は懐かしいと言いながら、部屋の中を見て周っていた。
もう、他の子が使っているベッドに座って、「俺ここだった」と懐かしさにふけっている琢磨を見て、田村さんに聞くのは、今しかないと思った。
「田村さんって、ここに居た子の名前とかって全員覚えているんですか?」
琢磨は私達にお構いなしに、イスに座ったり、漫画を開いたりしていた。
「ここで育った子の事を忘れる事なんてないわよ」
そう答える田村さん。
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