32人が本棚に入れています
本棚に追加
ほっ。
今日の所はなんとか乗り切れたと思った亜紀は、自分を抱き締める腕をみたあと、手を触った。
大きい手……。
薬指には指輪がちゃんとつけられている。
「ん? どうした?」
後ろから聞こえる声……シンが口を動かす度に、顎が頭に当たっているからか、亜紀の頭が少し揺れた。
「手、大きいなぁって思って」
「亜紀は小さいもんな」
そして、手を合わせてくる。
「握っていい?」
亜紀は自然とそう言っていた、するとシンは。
「俺が握ってやる。おやすみ亜紀」
といい、手を包むと抱き締め直し、静かになった。
温かくて幸せで……。
2人は静かに眠りについた。
――あれから、シンは新年度を迎えるための準備があると、仕事が忙しくなり、亜紀と会う機会が減っていた。
亜紀も亜紀で、学校に通う準備をしなくちゃいけなくて、なんだかんだパタパタと毎日を過ごしていた。
そして4月に入り。
シンの学校、亜紀の専門学校でも入学式が行われた。
「というか、なんで俺はまたここなわけ?」
1年振りに帰ってきたというのに、シンがいるのは音響の機会の前。
今年はゆっくり入学式が見れると思っていたが、シンの考えは甘かった。
最初のコメントを投稿しよう!