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なんでこの時、メールを送らなかったんだろう。
なんでこの時、電話をかけなかったんだろう。
ただ私は、貴方の驚く顔が見たかっただけ。
――エレベーターが6階についた。
シンの部屋へと足を進めようとしたとき、ふと視界に入ったあずさの部屋……そこからシンが出て来るのを見てしまった。
なんで……?
亜紀はエレベーターの中に急いで戻っていた。
何故自分が隠れているのか……。
なんで、あずさの部屋から……出て来たの?
胸が苦しくて、亜紀は唇を噛み締めた。どうしてなのか、全然わからない。
なんで? なんであずさの部屋から出てきたの?
すると、届いたメール。
《あとどれくらいで着きそう?》
あの現場を見なかったら……こんな気持ちにはならなかった。
普通にウキウキで、嬉しくて、とびっきりの笑顔を見せれたのかもしれない。
今から行けなくなったって言いたくても、言えない理由がある……シンの財布が右手にあった。
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