*…小さな嘘…*

6/12
前へ
/35ページ
次へ
 本当はこのまま帰りたい……。  無かった事にしたい……。  見なかった事にしたい……。  でも、 《もう着くよ》  そう送って、行くしかなかった。  今帰ったら……なんだか負けの様な気がした。  見なかった事にしよう……。そう思っても、見たことに変わりはない。  今にもポキッと折れてしまいそうな気持ち、本当は泣いてしまいたいけど……確かめる必要がある。  きっと何か事情があったんだ。  電球が代えれないとか、瓶の蓋が開かないとか、排水口がつまったとか。  きっと、そうだよね……。  シンに限って浮気なんてない……信じてるもん。  本当は怖いけど、疑っちゃうけど……信じるもん。  シンの部屋の扉の前まできた、シンの財布をカバンの中にしまい、チャイムを押す。  すると、少しして扉が開いた。 「おかえり」  その微笑みはいつもと変わらない、態度もいつもと変わらない。 「ただいま……」  大丈夫なにもない。  亜紀も笑顔で答え、家の中へ。  リビングに行き、すぐにソファに座った。 「熱くなかったか? 麦茶飲む?」 「うん」  シンは亜紀の頭を撫でるとキッチンへ行った、そのうちに亜紀は財布を静かにテーブルに戻した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加