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何もない……何もない……。
「はい」
「ありがとう」
麦茶を受け取った。
普通にしなくちゃ、普通に。
シンは亜紀の隣りに座る。
「でも、亜紀が来てくれるなんて嬉しいよ」
あの現場を見なかったら、きっと素直に嬉しかった。
「亜紀に会いたかった」
あの現場を見なかったら、凄く凄くうれしかったはずなのに……。
うまく笑えない……。
やっぱり笑えない……。
「亜紀?」
胸の奥からわき出る不安や、もし私の存在がシンの中で小さくなっていたらという恐怖……。
信じたくても、やっぱり信じきれない自分……。
限界だ……。
「亜紀どうした?」
シンの顔が見れなかった、涙が流れてしまいそうで、見れなかった。
「ちょっと気分が悪くて……バス酔いしたのかな?」
「亜紀?」
亜紀の様子がおかしい事に、シンは気付いて居る。
バス酔いじゃない事なんて分かっていた。
「ベッドで休むか?」
「ううん、大丈夫」
でも、シンは気付いてない振りをした。
亜紀はこうやって……何か不満や悩みがあっても、自分には言ってこない、それがシンは嫌だった。
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