*…小さな嘘…*

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 シンは知っていた……自分があずさの部屋から出て来たのを見られた事も、亜紀がこの部屋に来ていた事も。  全部知ってて、シンは亜紀に普通に接した。  亜紀から聞かれるのを、待っていたんだ。 「亜紀……」  肩を抱き寄せると、ビクッと反応する君……。  どうしてそんなにビクツクのか……。  相沢は良くて……俺は駄目なのか?  引っ越しの時、亜紀に『帰るぞ』といい、肩を抱いた時のあの現場を思い出す。  亜紀は、ビクつく事なく相沢の手を払おうともしなかった。  嫌でも、相沢に気があるのか、そう思ってしまう。  今亜紀は、シンに肩を抱かれて固まっていた、力が入っている事なんて、嫌でもわかる。  まぁ今はその事はいい。  シンは黙って考えていた、どうにか亜紀の口から、自分についての不満や、悩みをきかなきゃいけないと。  こうやって、これからずっと亜紀がため込むようになると、この先続かない。  今回はシンが気付いたから良かったものの、もしこの先気づけない事があったら……亜紀はボロボロになっていくだろう。  だから、すぐにでも言ってきて欲しいんだ。  少しでも疑わしいなら。  少しでも不安があるなら。 「亜紀……なんか辛そうだけど、バス酔い以外に理由があるんじゃないのか?」  そう聞くと、亜紀は。 「どうして?」  そう聞いてくる。 「どうしてって、ただなんとなく」 「何もないよ」  そうやって君は、何も言わない。
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