32人が本棚に入れています
本棚に追加
シンは知っていた……自分があずさの部屋から出て来たのを見られた事も、亜紀がこの部屋に来ていた事も。
全部知ってて、シンは亜紀に普通に接した。
亜紀から聞かれるのを、待っていたんだ。
「亜紀……」
肩を抱き寄せると、ビクッと反応する君……。
どうしてそんなにビクツクのか……。
相沢は良くて……俺は駄目なのか?
引っ越しの時、亜紀に『帰るぞ』といい、肩を抱いた時のあの現場を思い出す。
亜紀は、ビクつく事なく相沢の手を払おうともしなかった。
嫌でも、相沢に気があるのか、そう思ってしまう。
今亜紀は、シンに肩を抱かれて固まっていた、力が入っている事なんて、嫌でもわかる。
まぁ今はその事はいい。
シンは黙って考えていた、どうにか亜紀の口から、自分についての不満や、悩みをきかなきゃいけないと。
こうやって、これからずっと亜紀がため込むようになると、この先続かない。
今回はシンが気付いたから良かったものの、もしこの先気づけない事があったら……亜紀はボロボロになっていくだろう。
だから、すぐにでも言ってきて欲しいんだ。
少しでも疑わしいなら。
少しでも不安があるなら。
「亜紀……なんか辛そうだけど、バス酔い以外に理由があるんじゃないのか?」
そう聞くと、亜紀は。
「どうして?」
そう聞いてくる。
「どうしてって、ただなんとなく」
「何もないよ」
そうやって君は、何も言わない。
最初のコメントを投稿しよう!