*…小さな嘘…*

9/12
前へ
/35ページ
次へ
――『亜紀……なんか辛そうだけど、バス酔い以外に理由があるんじゃないのか?』  そう聞かれてドキっとした。シンが勘付いているんじゃないかと……でも、あずさの部屋で何をしていたのか……怖くて聞けない。 「何もないよ」  そう答えた。するとシンは、 「ちょっと、こっち向いて」  と、言ってくる。今、シンの目をジッと見つめる事は出来ない……きっと不安や嫉妬で目をそらしてしまう。  黙っていると、シンに無理矢理顎を捕まれて、シンの顔が視界に入る。  目が見れない……。 「亜紀……俺の目を見て」  見れない……シンに絶対にばれてしまう。 「亜紀、そんなに気分悪いのか?」 「うん……」  そう頷くしかなかった、そしたら、この状況から逃げ出せる。そう思ったから。  でも、シンは手を放すと。 「ふ~ん、そう。 俺は嘘つかれるのが一番嫌いだ」  そう言って立ち上がり、亜紀に背を向けた。 「えっ?」  思わずシンの背中を見てしまう。 「俺に言いたい事あるだろ? 聞きたい事あるだろ?」  シンの言った事は当たっている……でも、どうしてシンがそう言うのか。  やっぱり……シンに気付かれた?  そう想うと、怖くなった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加