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*…小さな嘘…* #2
――えっ!?
時間が止まった様に感じた……今、あずさの所に行ってくると、確かにシンは言った。
自分が何も言わずに泣き出したから……?
「やだ……」
思わず歩きだすシンの手を掴んでいた。
「行かないで……」
「どうして?」
どうしてって……当たり前じゃない。他の女(ひと)の所になんて行って欲しくない。
「……」
こういう時に限って、素直な言葉がでない……行って欲しくない、私以外の人の所に行って欲しくないって、何故言えないのか。
「はあぁ」
そうシンはため息をつくと、亜紀の手を自分の手から放し、
「じゃあ行ってくるから。俺が戻ってくるまで帰るなよ! 帰ったらその時点で俺たちは終わりだからな。俺が帰ってくるまで、何が言いたいのか、何が聞きたいのか、ちゃんと整理しといて。
そうじゃないと、お前が泣いている意味分らないから」
そう言うと、シンは部屋から居なくなる。静かになった部屋……。
「うっふっふぇ~」
その瞬間、亜紀は声をあげて泣き出した。
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