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その亜紀の言葉を聞いて、シンは立ち上がると、亜紀の隣りに座り抱き締めた。
えっ……?
シンの温もりが、亜紀を包む、そして香水が鼻をかすめた。
「亜紀……亜紀を嫌いになった訳じゃない。
俺には亜紀しかいないし、お前しか好きじゃない」
シンの腕の力がますます強くなった。
「ごめんな……泣かせたりして。安藤のとこに行ったのは、安藤が風邪で寝込んでいるからなんだ……亜紀が考えているような事は決してない」
心の中につっかえていた物が、スーっと溶けていく感じがした。
「これから、不安や悩み、俺に不満があったら、すぐに言ってこい。
お前はすぐに、ため込むから……俺は心配なんだ」
シンが冷たく接した事も、突き放した事も、全部自分のためだった……そう気付いた亜紀は。
「ごめんなさい……」
そう泣きながらシンに抱き付いた。素直になれない私を、素直にさせるために、シンはわざと冷たくしたんだ。
あんな風にされるんだったら、素直言った方がいい、亜紀は身を持って感じていた。
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