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「安藤ごめんな。それは出来ない」
あずさは手を放そうとしなかった。
「安藤、手をはなしてくれ。
これ以上、こんな事で亜紀を悲しませたくないんだ」
その言葉にあずさは顔をあげると、とても悲しい顔をした。
「ごめんな」
ゆっくりと力が解かれていく手、シンは腕が解放されると、そのまま自分の部屋へと入っていった。
あずさは玄関にうずくまり、静かに泣いていた。
――部屋に戻ってきたシンは、キッチンへ行き冷蔵庫開けた。
あずさの事が心配になったが、これでいいんだと自分に言い聞かせ、もう考えるのはやめにしようと、夕食の材料を出した。
料理を作り始めて出来上がる頃に、亜紀が風呂から出てきた。
すぐにキッチンにやってきた亜紀は、餃子や卵スープ、酢豚などを見て感激している。目を大きく見開き、両手を顔の前で合わせて「すごぉ~い」と言っている姿を見ると、とても抱き締めたくなる。
「料理運んでくれる?」
「もちろん。任せて任せて」
彼女はとても嬉しそうに、料理を運び出した。その時に、もうあずさの風邪は治ったから、行くことはないと話しておいた。
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