*…触れたくて…* #2

26/34
前へ
/35ページ
次へ
「安藤ごめんな。それは出来ない」  あずさは手を放そうとしなかった。 「安藤、手をはなしてくれ。 これ以上、こんな事で亜紀を悲しませたくないんだ」  その言葉にあずさは顔をあげると、とても悲しい顔をした。 「ごめんな」  ゆっくりと力が解かれていく手、シンは腕が解放されると、そのまま自分の部屋へと入っていった。  あずさは玄関にうずくまり、静かに泣いていた。 ――部屋に戻ってきたシンは、キッチンへ行き冷蔵庫開けた。  あずさの事が心配になったが、これでいいんだと自分に言い聞かせ、もう考えるのはやめにしようと、夕食の材料を出した。  料理を作り始めて出来上がる頃に、亜紀が風呂から出てきた。  すぐにキッチンにやってきた亜紀は、餃子や卵スープ、酢豚などを見て感激している。目を大きく見開き、両手を顔の前で合わせて「すごぉ~い」と言っている姿を見ると、とても抱き締めたくなる。 「料理運んでくれる?」 「もちろん。任せて任せて」  彼女はとても嬉しそうに、料理を運び出した。その時に、もうあずさの風邪は治ったから、行くことはないと話しておいた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加