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「おもしろい?」
「うん」
しばらくの間は、2人とも黙ってテレビに視線を向けていた。
シンはどうやって話しを切りだそうかと、考えている。ふと時計に目をやると、もう10時前だ。
「あのさ亜紀」
「うん?」
「いつ寝る?」
「このテレビ見てから」
「わかった。俺は先にベッド行ってるから」
そう言って、シンは寝室へと移動した。寝る前にじっくり話せばいいと考えたんだ。
寝室に入ると、ベッドのそばにある小さなスタンドライトをつけて、本を手にとり開いた。読んでいるわけではない、ただ開いただけ。
隣りの部屋をカーテン越しに見る、するとバッチリ亜紀と目があったが、亜紀はすぐに目をそらして、テレビの方を向いてしまった。
「……」
なんだか嫌な予感が、シンはした。もしかしたら亜紀は、話しをするのが嫌なんじゃないか。
「亜紀、テレビ終わった?」
「ま、まだだよ」
明らかに、動揺している。
「話しがあるんだけど」
「もう少しで終わるから……もうちょっと待って」
テレビに目をやると、こちらに手を振っているお笑い芸人が数人いて、テロップが右から左へと流れていた。
「あとどれくらいで終わるの?」
「……30分くらいかな」
なんとも分かりやすい嘘をつくのかと、シンは気付かない振りをして、わかったと答えた。
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