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「亜紀……」
名前を呼ぶと、亜紀は顔をあげてシンを見た。その瞬間、亜紀の瞳からは涙が溢れだす。
「ごめん、俺……こういう聞き方しか出来なくて。
タバコ吸ってくる」
亜紀の涙を見ていられなくて、シンは手を放すとベランダへと出た。自分のやりかたが酷いと思いながら、タバコに火をつけた。
無理矢理抱いて、亜紀の気持ちを変える自信なんて、あるわけなかった。逆に嫌われてしまうだろう……そんなの明確なのに、プライドか。
亜紀の前では、強引でいたいだけなのかもしれない。
タバコが短くなってきたとき、いきなり体が後ろに引っ張られた。
振り向くと、涙を左手で拭きながら、亜紀が洋服を引っ張っている。すぐにタバコの火をけした。
「ちゃんと……話したいの」
そう亜紀は言うと、シンに背を向けて、部屋の中へと戻っていく。亜紀の行動に、少し安心しながら、シンは寝室へと戻った。
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