*…触れたくて…* #2

30/34
前へ
/35ページ
次へ
「亜紀……」  名前を呼ぶと、亜紀は顔をあげてシンを見た。その瞬間、亜紀の瞳からは涙が溢れだす。 「ごめん、俺……こういう聞き方しか出来なくて。 タバコ吸ってくる」  亜紀の涙を見ていられなくて、シンは手を放すとベランダへと出た。自分のやりかたが酷いと思いながら、タバコに火をつけた。  無理矢理抱いて、亜紀の気持ちを変える自信なんて、あるわけなかった。逆に嫌われてしまうだろう……そんなの明確なのに、プライドか。  亜紀の前では、強引でいたいだけなのかもしれない。  タバコが短くなってきたとき、いきなり体が後ろに引っ張られた。  振り向くと、涙を左手で拭きながら、亜紀が洋服を引っ張っている。すぐにタバコの火をけした。 「ちゃんと……話したいの」  そう亜紀は言うと、シンに背を向けて、部屋の中へと戻っていく。亜紀の行動に、少し安心しながら、シンは寝室へと戻った。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加