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亜紀はベッドに膝を抱えて座っている。シンは隣りに座った。
少しの間、沈黙が続く。
亜紀は抱えている膝に顔を埋めて、話しだした。
「私ね……シンの事好きなのに、嫌なの……想像しちゃうの」
声が震えている、
「洋子先生との事……」
静かな部屋、亜紀の声だけが聞こえて。
「馬鹿でしょ私。シンが洋子先生を抱いた場面を想像しちゃうの……どうしてそういう事をしたのかとか……シンがどういう風に触った……のかとか」
自分のした事の罪の重さを改めて実感する、どうしたら彼女は許してくれるのだろうか。
「ごめんなさい……」
「亜紀が謝る事じゃない。全部俺が悪い」
「ううん、私があんな事にこだわっているから」
顔を上げた亜紀の頬には、いくすじも涙のあとがある。次々と流れては落ちる雫。
何も言えない……話し合おうと言ったのは自分なのに、シンは何も言えなかった。
どうしたらいいのか、わからなかった。
ただ視線だけが絡まる……息をするのが苦しい、泣いている姿を見るのが苦しい。
「ごめん」
そう視線をそらすのが、精一杯だった。
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