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亜紀はとても満足だった。シンの浴衣姿も見れたし、一緒に屋台などを楽しむ事もできた。そして何より、一緒に花火を見れた事が嬉しかった。
でも元カノの事はどうなったんだろう……それが気掛かりだった。でもこの場を壊す事は出来ないため、それは聞けなかった。
(今は、花火を楽しむ時間)
そう自分に言い聞かせ、亜紀は花火に集中した。シンはというと、さっきから視線が花火と亜紀の顔を行き来している。
花火を見る亜紀の顔は、なんだか寂しげで、シンは気になった。何を考えているのか、花火で何か嫌な事でも思い出したのだろうか……。
亜紀の小さな手には、指輪が光っていた。
そして、最後に何発もの花火が盛大に上がった。きっとこの時、この花火をみている全員が、心奪われていただろう……大輪の綺麗な花に。
花は空に消えていく、そして名残惜しく煙だけが少しずつ風に流されて行った。
花火のすぐ後の静けさ……この時、時間が止まったかのように感じる。でもそれは幻想で、すぐに引き戻される。
「おわったぁ~」
相沢が立ち上がり、それにつられて皆が立ち上がる。
「帰りますか」
そして、帰る事になった。相沢は、段ボールを片付けてくると居なくなったが、すぐに戻ってきた。
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