*…sugar…* #2

17/22
前へ
/35ページ
次へ
「亜紀……」 「本当は嫌だよ。でも、私……友達とかにもシンが教師だって言いにくいんだもん。軽蔑されないかって、シンが変な目で見られないかって……怖かった」  自分にはシンを幸せにすることは出来ないんだろうか、なんでこんな見えない壁ばかりなのか。  麗子にはやっとの事で言えた。でも、明智や智也には言えずにいる。  こうなる事が、ずっと怖かった。  そして、その場に立たされた今……自分に出来る事は1つしかないとすぐに分かった。だから、口をついて『別れ』がでてきた。それはシンを大好きだという証拠……証。  亜紀はこの場所から、1秒でも早く居なくなりたいと思い。足を3歩ほど進めた。  このままここに居ると、弱い自分がでてしまう。 「待って……」  立ち去ろうとする亜紀の背中に、斉藤が声をかけた。亜紀の足はピタリと止まる。  涙が止まらない……悲しいから? 怖いから? 悔しいから?  心の中は、感情が混ざりあい、黒く重くなっていく。 「なんでそんなに泣くんですか? なんだか私が悪者みたいじゃないですか」  そう言い、斉藤は話しを続ける。 「悪い事してるのは……貴方たちの方なのに、なんで泣くんですか? なんで私がこんな気持ちにならなきゃいけないんですか?」  斉藤の瞳には涙が溜まっていた。シンはそれを見ている事しか出来なかった。手の中にある温かいものをギュッと握り締めて。 「ごめんなさい……」  亜紀のか細い声……。 「謝らないでよ!」  斉藤の瞳から涙が流れる。 「本当は、先生の事大好きで本当に尊敬してた……でも、貴方と付き合っている事を知って、凄くショックだった。なんだか裏切られた気分だった」  風が3人の間をすり抜ける。 「なんで……こんな気持ちにならなきゃいけないの? 私は悪くないのに……」 「斉藤」 「なんで、こんなに苦しくならなきゃいけないんですか。私は間違ってない……」 「あぁ、斉藤は間違ってない。いけない事をしてるのは先生たちだ、それは自分でも良く分かっている。 亜紀と別れる気は俺にはない」  シンは亜紀の手を取ると、指輪を亜紀の手へと返した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加