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「斉藤本当にごめん。先生にはやっぱり何も出来ない。軽蔑されても仕方ないよな」
「……」
「……」
沈黙がこんなに苦しく、重いものだなんて……。
誰でもいいから話して欲しい、誰でもいいから何か言って。
「斉藤ほんとうにごめん」
「私……失礼します」
結局、シンはこれ以上斉藤に何も言える言葉がなくて、背中をジッと見送るだけだった。
亜紀は黙って、すすり泣いている。斉藤の姿が見えなくなるまで、シンはずっと斉藤の事を見ていた。
――ポンッ。
「よしっプラネタリウム見に行くか」
そうシンは何事もなかったかのように、亜紀の頭に手を置くと笑顔で話しかけてきた。亜紀は涙をふきながら、
「私……」
そう小さく呟く。そんな亜紀を見てシンは手を握ると、歩きだした。
会場までの道を戻る。
「シン……」
「亜紀なにも言うな」
シンの手にはギュッと力が入っていた。指輪は亜紀の手の中で、自分の居場所を探しているかのように、コロンコロンと転がっていた。
「俺は亜紀の事を好きだから付き合った。愛してるから付き合っている。俺はこれで良いんだ、気持ちを押し殺す事なんて出来ないから」
「シン……」
「もうこの事は考えるな。せっかくのデートなんだから、楽しく過ごそう」
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